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「病巣 巨大電機産業が消滅する日」

江上剛の「病巣 巨大電機産業が消滅する日」(朝日新聞出版)を読みました。
病巣
経済小説をあまり好んで読むことはありません。本作の作者である江上剛や汐見薫、真保裕一、真山仁、滝沢隆一郎、高杉良・・・読み応えがあったのは真山仁と真保裕一、そして江上剛くらいなもの。

江上剛は「告発の虚塔」を読んだだけですが、「三大メガバンク」の1つ、みずほフィナンシャルグループ内の派閥争いが描かれていてオススメに値する内容でした。

本作は、2015年最大の経済事件とも言われる「東芝の不正会計問題」を扱った小説です。大企業の「不正」としてスクープ報道されるのは氷山の一角(実名を伏せて報道されることはありますが)。

もうけ第一主義で粉飾決算を繰り返し、加えてアメリカの原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)を買収して巨額の債務を抱えました。本書では本丸と思われる原子力事業ではなく、証券取引等監視委員会に対して行った内部告発に焦点が当てられています。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
日本を代表する総合電機メーカー芝河電機に勤める瀬川大輔は、本社監査部勤務を命じられた。瀬川は内部告発をきっかけに、芝河の基幹部門PCカンパニーが危機的状況であることを知る。告発した社員は瀬川に後を託して自殺をしてしまう。PCカンパニーだけではなくその他のカンパニーでも粉飾決算が横行していた事実をつかみ愕然とする瀬川。証券取引等監視委員会も密かに動き出した。やがて買収した原発企業EECの巨額損失が発覚し、芝河は経営危機に陥る―。

「時事ドットコム(2016/12/10)」によれば、
東芝の粉飾決算とは=東芝の不正会計問題 証券取引等監視委員会が2015年に行った報告命令をきっかけに、東芝が不正な会計処理で過去7年間に2248億円の利益をかさ上げしていたことが判明した。このうちパソコン事業では、部品価格に一定額を上乗せして製造委託先に販売し、完成品を買い取る「バイセル取引」を悪用して計約600億円の利益水増しを行ったとされる。監視委は西田厚聡、佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長が水増しを主導していたとみて、3人を任意で事情聴取した。

ネタバレになりますが、主人公の瀬川は2002年入社の「若手」。同期である会長秘書の北村、社長と同じ大学出身で漕艇部の後輩であり電力社の営業担当の宇田川、そして唯一の女性であるるり子、この同期入社4人が「チーム」を組み、証券取引等監視委員会に勤める吉田(北村の同窓生)に内部告発の資料を渡して・・・芝河電機の不正が明らかになっていくまでを描いています。

東芝を「モデル」とした小説なので、この4人は作者の創作。同期と言っても全幅の信頼を置くことはできず、お互いに疑心暗鬼を生じ、最終的には固い絆で結ばれることになるのですが・・・こういったところが小説ならではの面白さ。

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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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「似ていることば」

このブログには「小説」の読書記録を載せることがほとんどですが・・・

図書館で妻が借りてきた写真集をパラパラ読み。書かれている内容のうちのほとんどが「何を今更・・・こんなモンを本にするのがオカシイ・・・」と思うほどショウモナイもの知識欲を満たしてくれるものではありませんでした。

が、興味をそそられるものがいくつか・・・

読んだのは、おかべたかし/文 やまでたかし/写真 「似ていることば」(東京書籍)。
似ていることば
東京書籍のHPには、次のように紹介されています。
なんとなく似ているが、どこがどう違うのか? と改めて聞かれるとわからないものってありませんか?
本書では、「竹と笹」「林と森」「ヒラメとカレイ」「ミミズクとフクロウ」「交ぜると混ぜる」「搾ると絞る」など、「似ている」言葉の雑学を写真で紹介します。
「似ている」ということは、その反面「同じではない」ということ。それらがどう違うのかという関係に着目し、楽しみながら、日本語の奥深さを知ることのできる写真集です。


上記のもの以外に、足/脚 現す/表す イモリ/ヤモリ 陰/影 壁/塀 菖蒲/花菖蒲 羽/羽根・・・など多分野にわたって「似ている」ものが載っています。写真がメインで文は短く、簡潔。子どもに大人が写真を見せながら読んであげるという使い方をするのがベスト?な写真集です。

興味深く読んだ(見た)ものを紹介しますと・・・

◆シャベルとスコップ
関東と関西で指すものが逆。関東では大きいのがスコップで小さいのがシャベル。関西では大きいのがシャベルで小さいのがスコップ。こういう「調査」結果が紹介されています。

ネットで検索すると=JIS規格では足をかける部分があるものをショベル(シャベルではなくショベルと定義されている)、無い物をスコップ=なのですが、実態と「規格」が異なる見本ですね。

園芸用に使う小さいものは「移植ごて」と呼べばいいと思うのですが・・・。

◆「いねむり」と「うたたね」
どちらも無意識のうちに寝てしまうという意味。寝てはだめなときに寝てしまうのが、「いねむり」。寝てもいいときに寝るのが、「うたたね」。

他人様から非難されるのが「いねむり」で、何の罪もないのが「うたたね」と言い換えてもいいでしょう。

目覚めたときに気持ちいいのが「うたたね」で、目覚めたときに恥をかいたり、刑務所行きとなったりするのが「いねむり」(笑)と言ってもいいかも。

◆卵と玉子
産まれたものは「卵」で、食べるものは「玉子」。本来は「卵」が正しい漢字。

料理の素材となったり、食卓に上るある程度の大きさがある卵だけ「玉子」と表記するようになった日本独特の文化を表現した表記なんですね。



テーマ : 図書館で借りた本
ジャンル : 本・雑誌

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「アシタノユキカタ」

小路幸也の「アシタノユキカタ」(祥伝社)を読みました。
アシタノユキカタ 
その世界で名を成した有名ミュージシャンを主役とした音楽物語(短編集)である「うたうひと」と限界集落と言っていいほどになってしまった故郷を再興するために戻ってきてからの2年間を描いた物語「ストレンジャー・イン・パラダイス」の2冊しか読んだことがない作家。

どちらも爽やかで心温まる小説でした。

今回ご紹介する作品も上記2作と同じく、心温まる小説でした。どちらかと言えば中高生やお若い方向きの作品で、全てがうまくいきすぎて軽~い感じがするのですが、読みやすくて一気に読んでしまえるという点ではまあまあの作品でした。

「BOOK」データベースには「紹介」がなかったので、祥伝社のHPに載っている「内容紹介」を紹介しますと・・
ろくでなしの俺たちだって、
きっと誰かを幸せにできるんだ。

札幌から熊本まで2000キロ。
ワケあり3人の奇妙なドライブが始まった――

「先生、この子を母親のところまで連れて行ってくれないかしら」
ある日、十歳の少女あすかを連れて訪ねてきたキャバクラ嬢の由希は、札幌に暮らす「片原修一」に迫った。あすかは高校教師だった彼の教え子鈴崎凛子の娘で、由希は凛子の親友だという。凛子は現在、帰省した熊本で緊急入院しているらしい。なぜ僕が?と応じる「修一」に、かつて二人が“特別な関係”だったことを持ち出す由希。かくしてそれぞれが抱える“大人の事情”も絡み合う、日本縦断七日間の奇妙な旅が始まった――。


「片原修一」は元高校の英語教師。ある事情で高校を辞め、フリースクールでアルバイトをしています。

ネタバレになってしまいますが、由希が札幌から熊本まで「修一」だと思って同行していたのは、「修一」の大親友であり、今は詐欺師として生活する「篠田高之」。

この「詐欺師」が親友思いの好人物として描かれ、ハッピーエンドに導く主人公として知恵を絞る物語。

免許証から小学4年生のあすかに正体がばれ、由希がその事実を主人公から確かめて以降がこの物語の肝なので、バラしてしまっても差し支えない?でしょう。

不遇な過去を共有し、共感し合う由希と凛子。それ以上に結びつきの強い修一と主人公の高之。この結びつき、絆の強さあっての物語ですので、詐欺師としての高之の行動を読む者は「うまくいきますように」と応援してしまう側に導かれてしまいます。

これ以上書くと読む楽しみを奪ってしまいますので、省略。

あまりにもうまくストーリーが進みすぎてあっさりしすぎているのですが、その点を補ってあまりある「温かみ」満載の小説です。軽い話はお断り、とおっしゃる方にはオススメできませんが・・・。
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「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」

大倉崇裕の「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」(講談社)を読みました。
クジャクを愛した容疑者 
この作家は当たり外れが極端で、私が気に入ったのは「白虹」などの山岳小説。次に福家警部補シリーズと今回の警視庁総務部動植物管理係(警視庁いきもの係と本作から変わってしまいましたが)シリーズ。

酷かったのは「BLOOD ARM(ブラッドアーム)」や「スーツアクター探偵の事件簿」、「白戸 修の逃亡」などで、こうも作品によって良し悪しがはっきり分かれる作家は珍しいです(もちろん、私の好みの問題ですが)。

ましな本シリーズでも第2作目の「蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係」は質が落ち、3作目で1作目の面白さが復活・・・という具合に「安定」しない作家。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
強面の窓際警部補・須藤友三と、生き物オタクの女性巡査・薄圭子の名(迷?)コンビが「アニマル推理」で大活躍!!

あまりにもアッサリしすぎた紹介なので、講談社のHPを見ると「作者コメント」が載っていましたので、こちらも紹介しますと・・・
 ペットを飼っている人が、突然、事件に巻きこまれたり、あるいは容疑者として逮捕されたら、そのペットの世話はいったい誰がするのだろう。2009年、ふとそんなことを考えた。ジュウシマツをテーマにしたミステリーを書きたいと思っていたので、すぐその思いつきに飛びついた。それが、「警視庁いきもの係」の第1話『小鳥を愛した容疑者』である。

 幸い、好評をいただき続編を書くことになった。次はどんな動物にしようか。どうせやるのなら、ちょっと珍しい動物がいい。そう、ペンギンとかサルとかカメとかヘビとか。

 こうして始まったシリーズもおかげさまで、4冊目になった。今回取り上げたのは、表題作でもあるクジャク、ピラニア、ハリネズミである。クジャクは、京都大学にクジャク同好会というものがあり、構内でクジャクを飼っているという情報をキャッチ。京大に突撃取材を敢行し、そこで得た知識を元に書いた。クジャク同好会の皆様、本当にありがとうございました。ピラニアは、当初から絶対に取り上げてみたかったもの。水槽の中から出られない「魚類」をどうミステリーにするのかに挑戦してみたかった。ハリネズミは、たまたま見ていたEテレの番組で、「ハリネズミはどうやって持つのでしょう?」というクイズがきっかけだった。できれば実際に持ってみたかったのだが、残念ながら体験できなかった。

 そして2017年、人生には時として思いも寄らないことが起きるものだ。「警視庁いきもの係」シリーズがドラマ化されるという。須藤友三は渡部篤郎さん、薄圭子は橋本環奈さんが演じてくださる。本当にいいのだろうか。薄はヘビに捲かれて喜んだり、サソリを食べたりするような人物だし、須藤は古傷を抱えた爆弾のような刑事だ。お二人に、「何だこれは?」と怒られそうな気がする。


あまり知らない動物の生態が書かれていて「知識欲」を満たしてくれるという点では評価できるのですが、薄巡査の「天然ボケ」ぶりが鼻につき、しかもその「ボケ」の質が1作目より2作目、3作目と順を追って笑えないショーモナイ「ボケ」に・・・。

作者は「落語好き」なんだそうですが、それなら・・・もうちょっとマシな「ボケ」と「ツッコミ」を期待するのは私だけでしょうか?

あらすじ? 紹介するに値しない作品もありましたが、「ハリネズミを愛した容疑者」だけは読み応えがありました。内容は読んでのお楽しみ。

本作から須藤警部補と薄巡査のコンビに芦辺という若い刑事が新たにチーム入りします。この芦辺が入ったことで今までの3作よりも登場人物の絡みに幅ができ、次作を期待するワタクシであります。

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「六花落々」

西條奈加の「六花落々(りっかふるふる)」(祥伝社)を読みました。
六花落々 001 
この作家の作品は10作ほど読みました。その大部分は時代小説。1作を除いてはオススメに値する時代小説でした。ただ一つ「ハズレ」だったのは、史実に沿って書かれた「涅槃の雪」。

今回読んだ「六花落々」は、史実に沿って書かれたもので、「雪の結晶を『雪華』と命名して、観察結果を『雪華図説』『続雪華図説』にまとめ出版した」ことで有名な土井利位(寺社奉行、大坂城代、京都所司代、本丸老中を歴任)と家老の鷹見泉石(忠常)を利位の御学問相手として支えた小松尚七という人物の視点から描いた歴史小説です。

やはり、果たして、結局、案の定、予想通り・・・西條奈加らしさをあまり感じることができない作品でした(ハズレとは言えませんが)。

ただ、「庶民」に近い尚七の目を通して描くという手法は西條奈加らしくて評価できるところではあります。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
冬の日、雪の結晶の形を調べていた下総古河藩の下士・小松尚七は藩の重臣・鷹見忠常(のちの泉石)に出会う。その探究心のせいで「何故なに尚七」と揶揄され、屈託を抱える尚七だったが、蘭学に造詣の深い忠常はこれを是とし、藩の世継ぎ・土井利位の御学問相手に抜擢した。やがて江戸に出た主従は、蘭医・大槻玄沢や大黒屋光太夫、オランダ人医師・シーボルトらと交流するうちに、大きな時代の流れに呑み込まれていく…。

登場人物は多彩です。一部を紹介すると・・・

オランダ正月という西洋の暦に合わせて新年会を数十年にわたり開いたり、解体新書の改訂版を刊行したことで有名な蘭医・大槻玄沢。

ロシアに漂流した船頭で、女帝エカテリーナ2世 (大帝) に謁見し10年間の滞在後に帰国した大黒屋光太夫。

説明が不要なほど有名なドイツ人医師・シーボルト。

そして、これまた歴史の教科書で誰もが知る大塩平八郎。

これらの人物との関わりが興味深く、尚七がさまざまな事件や人とのつながりから成長していく姿を描いています。

歴史好きな方にはオススメの歴史小説ですが、柱となっているのは、下総古河藩の貧しい下級武士であった尚七の「成長記」ですので、お間違いなく・・・。

「何故なに尚七」の渾名を持つ尚七が興味を持っていた六花(雪の結晶)が利位の興味と合致し、生涯をかけて六花の観察を続けていく尚七の「庶民」目線が読むものの共感をもたらす要因となっていると言っていいでしょう。
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プロフィール

キク

Author:キク
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旧「アコーディオン好きの徒然日記」ともどもよろしくお願いします。

◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

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