「アイネクライネナハトムジーク」

伊坂幸太郎の「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎)を読みました。
アイネクライネナハトムジーク
アコーディオン関係者の方には、モーツァルトの楽曲の中では有名な曲なので、アコーディオン編曲なり曲の紹介なり・・・と、勘違いされてしまいそうです。スミマセン・・・。

「アイネクライネ」「ライトヘビー」「ドクメンタ」「ルックスライク」「メイクアップ」「ナハトムジーク」という6編からなる連作短編集です。

「あとがき」で知ったのですが、作者は斉藤和義というミュージシャンの大ファンで、斉藤和義から「恋愛をテーマにしたアルバムを作るので、『出会い』にあたる曲の歌詞」を書いてくれないか」という依頼があったそうです。作詞はできないので小説を書くことになり、出来上がったのが「アイネクライネ」だったそうです。

・・・結果、斉藤和義が短編「アイネクライネ」の文章を使う形で曲を作ったのだそう・・・。小説の紹介で動画を紹介するのは多分初めてだと思いますが・・・その曲が次の動画の「ベリーベリーストロング~アイネクライネ~」という曲です。
この曲がシングルカットされて発売されるときの付録として書き下ろしたのが短編「ライトヘビー」。

上記2作を膨らませて4つの短編を書き、それをまとめたものが本作、という他に例があまりない珍しい作品です。

伊坂幸太郎の作品を読んだことはありますが、お若い人向けのものばかりだったので、この2,3年は遠ざかっていました。

本作もやはりお若い方向けの小説でしたが、私のようなオジサン(オバサン)が読んでもOKかも・・・。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL…。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。

連作短編だと書きましたが、各短編のつながりが時系列に沿っておらず、10年後に飛んだり、19年前に戻ったり・・・。そして登場人物が複雑(??と思っていると、子ども時代のことを描かれていた人物が大人になっていたり、結婚して名字が変わっていたり・・・)で、全ての短編が全体として大きくつながっている、ややこしい?構成ですので気をつけて読んで下さい。

内容は、読んでのお楽しみ。
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「物件探偵」

乾くるみの「物件探偵」(新潮社)を読みました。
物件探偵
おそらくこの作家の小説を読んだのは、初めて。

名前から女性作家だと思い込んでいましたが・・・ネット上の顔写真を見ると・・・髭面のオジサンでありました。「市川尚吾」名義でミステリ評論家としても活動しているそうです。

「田町9分1DKの謎」「小岩20分一棟売りアパートの謎」「浅草橋5分ワンルームの謎」「北千住3分1Kアパートの謎」「表参道5分1Kの謎」「池袋5分1DKの謎」という6編が収められています。

各編の冒頭には間取り図付きの物件情報が載せられていて、この点だけは斬新な趣向だと感じたのですが・・・探偵役として登場する人物の不自然さがこの推理小説の最大の欠点。読んだこと自体を後悔させられ・・・このブログで紹介することを止めようと思ったほど・・・。

新潮社のHPには、次のように紹介されています。
利回り12%の老朽マンション!? ひとりでに録画がスタートする怪現象アパート? 新幹線の座席が残置された部屋?? ――そんなアヤシイ物件の謎、解けますか? 『イニシエーション・ラブ』で日本中をまんまと騙した作家が、不動産に絶対欺されないコツを教えます。大家さんも間取りウォッチャーも興奮の超実用的ミステリ!

探偵役は不動尊子(ふどうたかこ)。各編の途中から突然、何の関係もないにも関わらず、怪しい物件に悩む人物の前に登場。「・・・決して怪しい者ではございません。・・・」と言って宅建の認定証を胸ポケットから取りだし、「・・・幼い頃から《不動さん》と呼ばれて育ったのも何かの縁と・・・宅建の資格を取ったのが15歳、中学3年のときでした。・・・大学では法律を学び、卒業後は希望通りに不動産屋に就職しました。しかし多くの物件を扱っていく中で、だんだんと、物件の声が聞こえるようになってきたのです・・・」とお決まりの台詞。

==ホーッホッホッ、わたしは喪黒福造、人呼んで"笑ゥせぇるすまん"==お金は一銭もいただきません。 私のお手伝いで、お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。==

昔流行った「笑ゥせぇるすまん」 のことを思い出してしまいました。この不動尊子は謎解きをするのですが、無報酬。突然現れて・・・去っていく。この不自然な「物件探偵」の正体が読み進めるうちに明らかにされるのだろうと思っていたのですが・・・最後の「池袋5分1DKの謎」で不動尊子の「師匠」が登場し、少し来歴が明かされるだけ。

昨年(2017年)発行された本ですので、もしかするとシリーズ化されて少しずつ不動尊子という人物の全体像が明らかになっていくのかも?

評価できることは・・・不動産の借り手、持ち主が抱える何らかのトラブルを解決するのに必要な不動産についての基礎知識や不動産業界の裏話が簡潔に説明されていること。

ミステリとしては・・・読むに値しません。
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「冥途あり」

長野まゆみの「冥途あり」(講談社)を読みました。
冥途あり
この作家は「野川」で初めて出会い、卓越した表現力に脱帽。2冊目に読んだ「45°」は同性愛がごく普通に描かれ、「野川」を描いた作者が書いたとは思えないようなペケ作品にウンザリ。3冊目は「白いひつじ」という可もなく不可もなくといった作品。

図書館でときどきこの作家の本を手に取りパラパラ読みをするのですが、SFもどきやファンタジー小説、同性愛(特にBL)・・・好みの作品はなく、ずっと遠ざかってきました。

本作を図書館で少し読み、「父親」の葬儀を描きながら父や祖父を始めとする親族の来歴を描いた「まとも?」な小説だと分かり、久しぶりに借りてみることにしました。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
川辺の下町、東京・三河島。そこに生まれた父の生涯は、ゆるやかな川の流れのようにつつましくおだやかだった―。そう信じていたが、じつは思わぬ蛇行を繰り返していたのだった。亡くなってから意外な横顔に触れた娘は、あらためて父の生き方に思いを馳せるが…。遠ざかる昭和の原風景とともに描き出すある家族の物語。

「冥途あり」と「まるせい湯」という中編が2編収められています。真帆という名の「わたし」が一人称で語っていく物語です。

ある番組でのインタビュー記事をネット上で見つけたのですが、「わたし」は作者自身とイコールではないそうです。「記憶の中からエピソードを借りてきた部分はある」と作者が語っていますので、作者の実体験をベースにした小説であることは間違いないようです。

「冥途あり」では亡くなった父の葬儀をきっかけに思い出話が語られ、実直だった父だけでなく、話は破天荒だった祖父を始め一族の過去を父の親族が語り合うなかで「わたし」が知らなかった父や一族について思いをめぐらすという内容。

「父」は昭和5年に東京の三河島で生まれ、まもなく根岸に移って中学までを過ごします。疎開先だった広島に一家揃って移り住むこととなり、そこで「8月6日」を迎えます。

東京に戻ってから「父」は広島のことを語ろうとはせず、その記憶を封印することで穏やかに暮らし、以来50年あまりをこつこつと働いて・・・人生をまっとうしました。

葬儀に集まった親戚から「わたし」が知らなかった「父」の被曝や苦労話だけでなく、祖父や曾祖父のことにまで話が及び・・・初めて聞く話に驚きを隠せない「わたし」。

静かな戦争の物語でもあるのですが、彩りを添えているのが大酒飲みで怪しげな骨董屋を営む双子の従弟が語る話。この双子のウソかホントか判断できない話がこの小説を面白くしている最大?の緩衝材。

「父」の死をきっかけに一族の過去を知り、それが未来へと受け継がれるという味わい深い小説に、この双子のハチャメチャとも思える思い出話が良い味つけとなって、読後感をよいものにしてくれています。

「まるせい湯」については省略します。

「野川」のよさには負けてしまいますが・・・オススメの一冊です。
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「ふくろう」

梶よう子の「ふくろう」(講談社)を読みました。
ふくろう
ネットで調べたことなので正確かどうか???ですが、この小説のモデルとなったのは、実際にあった江戸城中での刃傷事件。

江戸城中での刃傷事件は記録に残るもので7件あり、有名なのは仮名手本忠臣蔵として人形浄瑠璃・歌舞伎で人気を博し、今も映画やテレビドラマで題材とされる「赤穂事件」。これは18世紀初めの事件です。

この小説で取りあげられているのは、19世紀初めに起きた「千代田の刃傷」と呼ばれる事件で、これも歌舞伎とし上演されたり小説化されたりしている有名な事件です。

史実はほんの一部で、史実に作者が多くの脚色をして出来た小説のようです。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
伴鍋次郎は西丸書院番士に引き立てられるが、両親はなぜか狼狽する。町で会った初対面の老武士には「許してくれ」と土下座され、不審は募るばかり。そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。自分は養子だったのか?己の出生の真相に迫る鍋次郎。私はいったい誰なのだ。ふくろうの根付にこめられた我が子への願いとは。若手注目株の長編時代小説。

物語は、西丸書院番士(将軍世嗣の住まいである西丸の警備と外出時の補佐役)として出仕することが決まった伴鍋次郎が自分の出生の秘密を妻の父(剣術道場師範の高萩惣吾)から聞かされたことが主な内容となっています。

物語の主人公は鍋次郎なのですが、内容的には実の父である松平外記。「ふくろう」では鍋次郎が松平外記の次男となっていますが、これは作者の創作のようです。

伴家では男子を続けて二人亡くし、ある事情(これがこの物語の大半を占めます)があって養子として迎えた鍋次郎を「実子」として育ててきました。

この「事情」を知ることとなった鍋次郎の物語なのですが・・・繰り返しになりますが、実質的には実父である松平外記の物語。ということで、鍋次郎のことは省略し、松平外記について少しだけご紹介します。

松平外記は高萩惣吾の親友で、西丸書院番士として誠実に務めていた人物。当時の西丸書院番では風紀が乱れ、新しく任に就いたものは三月ももたずに辞するということが続いていました。新任の者がいつ書院番を退くかを賭の対象にするという乱れぶり。

新任には徹底的な嫌がらせ(いじめ)が行われ、外記に対しても読んでいて気分が悪くなるような「いじめ」の数々が・・・。

外記が先輩たちと異なっていたのは、刃傷沙汰を起こしたこと。城中で3名を切り捨て、他にも2名に手傷を負わせ、自らは切腹・・・結果、城中の悪しき慣習は改善されることとなります。

「千代田の刃傷」と呼ばれる事件に作者独特の脚色をして、読む者に感銘を与えるような時代小説として描きあげた作者の感性に感服させられました。

ご一読あれ。
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「砂丘の蛙」

柴田哲孝の「砂丘の蛙」(光文社)を読みました。
砂丘の蛙
昨年、「狸汁 銀次と町子の人情艶話」を読んで・・・ガッカリ。もう読まないでおこうと思っていたのですが、書名と表紙の絵に惹かれて、つい借りてしまいました。

女性を性の対象としか見ないような「人情艶話」の女性観にウンザリさせられたにもかかわらず、また同じ作家の作品を読んでしまったことを後悔するかもと思いながら読み始めたのですが・・・可もなく不可もなく、といったところです。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
殺人の罪で逮捕・投獄され、満期出所したばかりの男が、何者かに殺害された。直後、9年前に男を逮捕した刑事・片倉康孝もまた、何者かに襲撃されて…。片倉康孝と若きホープに成長した柳井淳が、不可解な事件を追う!『黄昏の光と影』に続く第二弾!!

主人公は、停年が近く、刑事課に配属されたばかりの新人指導員として現場に出る機会が増えたにも関わらず、当たり前だった「残業」などはなくなり、刑事としての職務が激減した片倉警部補。

警察小説でよくある、忙しさにより家庭が崩壊して離婚・・・この主人公も同じ道をたどってきました。が、今は全く違う生活。

そんな片倉がかつて逮捕し、9年間の服役を終えて千葉刑務所から出所したばかりの崎津という男が遠い神戸で刺殺され、海に捨てられたという一報が入るところから物語が始まります。

その事件が起きてすぐに、片倉が同じ犯人と思われる男に刺され、重傷を負います。

病院を強引に「退院」した片倉は自分自身が被害者となったこの事件の捜査からは当然外されるのですが、かつて指導した部下である柳井らとこの2つの事件を追い、神戸へ。

そして、どうやらこの事件の背景、カギは鳥取や島根にあることを突き止め・・・以下省略。

この物語は、2012年10月に兵庫県尼崎市で発覚した連続殺人死体遺棄事件(尼崎事件)にヒントを得て書かれたようで、殺された崎津の足取りを追ううちに多くの人物が殺されて鳥取砂丘に埋められていたことが明らかになり、連続殺人事件だったことが明らかになっていきます。

前半部ではいろんな事実が「点」として明らかになるのですが、読み手は多くの「点」の意味が全く分かりませんので、後半に一気に片倉たちがそれを「線」にし、全容を明らかにしていく過程を驚きを持って知ることとなる、そんな構成です。

もしお読みになるなら、前半部を辛抱し、耐える覚悟を持ってお読み下さい。
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プロフィール

キク

Author:キク
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旧「アコーディオン好きの徒然日記」ともどもよろしくお願いします。

◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

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