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「涼やかに静かに殺せ」

森村誠一の「涼やかに静かに殺せ」(双葉社)を読みました。
涼やかに静かに殺せ
若い頃によく読んだ作家ですが、退職してからはほとんど読む機会がありませんでした。このブログで紹介したことがあるのは2冊だけ(たぶん)です。現在86歳の著者が77歳のときに発売された「遺書配達人」と80歳のときに発売された「深海の夜景」をご紹介しました。

2冊とも短編集でしたので読み応えはあまりありませんでしたが、味わい深い短編集としてオススメしたのですが・・・本作「涼やかに静かに殺せ」は??? 同一人物の作品とは思えないほどツマラナイ長編小説でした。

ネットで調べると・・・著者が83歳のときに発売され、作家生活50周年、著作400冊目という記念すべき作品だったようですが・・・。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
西新宿のラグジュアリーなホテルにあるバー「バッカス」。そこには夜な夜な怪しげな紳士たちが集まってくる。その中のひとり星名は、ある常連から、最近奇妙な遊びが流行っているという噂を聞かされる。プロの犯罪集団が一般人に“悪百科”を教えるビジネスを始めたというのだ。折しも、星名のもとに誘拐された愛猫の捜索依頼が舞い込むが、犯人は、身代金として一万円を社会福祉事業団に送るよう要求してきた。人を食ったような誘拐事件に、星名は胸騒ぎを覚える。

主人公は、自称「事故処理業」を生業とする星名五郎。伊賀忍者の末裔で、かかえているスタッフ数名も遠祖は忍者。この設定からして・・・読む気力を萎えさせるもの。

日本有数のホテルにある会員制のヘルスクラブで一日の疲労をほぐした後、同じホテル内にある世界の銘酒を集めたバー「バッカス」で心身を放散するときが彼の最もくつろげる時間。愛車は916馬力のマクラーレンXー1。

巨万の富をなしたものだけが通える「バッカス」の常連たち(IT界の大物、与党の元幹事長、元自衛隊精鋭部隊長、デパート界の重鎮、要人たちの主治医、凄腕の殺し屋、弁護士、元ゼネコン専務、元国際フィクサー・・・)の力を借りて巨悪に対峙する物語。

例外も後半に登場しますが、そのほとんどは本部をアメリカに置く民間戦争代行会社(PWA)絡みの反社会性の強い「プレイ」を日本から駆逐するというもの。

さまざまな「プレイ」に飽きた有閑階級(富賊)の「あそび」として登場するものが次々と・・・身代金を目的としない「猫の誘拐」、PWAから安全を保証された「レイプ」、同じく「ホームレスに変装してのホームレス襲撃」、「大学内の秘密人身売買」、「金満老人をねらった結婚詐欺」・・・その他・・・。

この物語がツマラナイ理由は、「バッカス」の常連たちが「真相」に迫るまで、そして難題を解決するまでの過程にあります。あまりにもスイスイといきすぎなのです。それほどまでに彼らの人脈が広いと言ってしまえばそれまでですが・・・。

天下国家を論じる内容も含めて、全てがチャチっぽく、軽薄短小。森村誠一らしさを全く感じられない小説でした。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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「テーラー伊三郎」

川瀬七緒の「テーラー伊三郎」(角川書店)を読みました。
テーラー伊三郎
昨年の12月に読んだ「フォークロアの鍵」の読後感がよく、「法医昆虫学捜査官」シリーズ外のものも読んでみようと・・・図書館で探すと、すぐにこの作品が見つかり・・・期待して読み始めました。

この作家の作品に「ミステリ」に分類されないものがあるとは思っていませんでした。本作はミステリの要素を取り入れず、純粋に展開を楽しませる「エンターテインメント」。おまけにこの作家の元の職業(服飾デザイン)と密接に繋がる内容で、こんな作品も書けるのか~、と感心させられました。

ただ、登場人物のキャラクターがオソロシク濃くて・・・そこだけは、今まで読んだ作品と共通するものでした。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
福島の田舎町で、ポルノ漫画家の母と暮らす男子高生・海色。17歳にして人生を諦めていたが、ある日、古びた紳士服店「テーラー伊三郎」のウィンドウに現れた美しいコルセットに心奪われる。

頑固な老店主・伊三郎がなぜ女性下着を―騒然となる町内を尻目に、伊三郎に知識を買われたアクアは、共に「テーラー伊三郎」の新装開店を目指す。活動はやがて、スチームパンク女子高生や町に埋れていた職人らを巻き込んでいき…。

仕立て職人と少年が“コルセット”で革命を起こす!?灰色の日々を吹き飛ばす、曲者(主に老人)揃いの痛快エンタメ!


主人公は震災後の福島の保守的な田舎町に母と二人で暮らす男子高校生、海色(アクアマリン=通称アクア)。

ポルノ漫画家の母、寂れた商店街の各店主たち(高齢者)、同じ高校に通う図抜けた東北弁を操るスチームパンク・ファッション好みの明日香、元教頭で地元で絶大な権力を振るう真鍋「女史」、アクアの同級生で友人でもある資産家の息子等々・・・登場人物はすべて強烈な個性を持つ人物ばかり。

自分の人生についてマイナス思考で、無難に生きようとするアクアがシャッター商店街にある「テーラー伊三郎」のウインドウでコール・バルネ(コルセット)を目にしてから、偏屈老人・伊三郎の店を再建(再生)する過程を描いた物語です。

母のポルノ漫画の背景を描くことでコルセットや服飾の知識を得ていたアクア。そういう彼だからこそできた挑戦物語。「狭い」田舎社会故に次から次へと試練が訪れます・・・。その試練を乗り切るなかで、アクア自身はもちろん自己変革を遂げ、今まで無気力に見えた老人たちはそれまでの人生経験で得た知識や技術、人脈を駆使し、想像もできなかった「革命」を起こしていきます。

詳しく書くと読む楽しみを奪ってしまいますので、どんな出来事だったかは、省略します。興味を持たれた方はぜひお読みください。

最初に書いた「期待」は裏切られることなく、一気に読ませる力を持った作品でした(ただし、服飾に無関心な私には???な用語が頻出・・・意味を調べながら読み進める、という面倒なことになりましたが)。
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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「銀漢の賦」

葉室麟の「銀漢の賦」(文藝春秋)を読みました。
銀漢の賦
寛政年間、九州(北九州)にある架空の譜代小藩、月ヶ瀬藩を舞台にした時代小説です。

主人公は、下級武士(郡方)である日下部源五。源五の竹馬の友であり、数々の実績を上げてきた家老・松浦将監とある出来事をきっかけに絶縁状態になった経過が少年時代、青年時代にまで遡って描かれ、時代を行きつ戻りつしながら物語が進んでいきます。

少年時代に笹原村の百姓の倅・十蔵とこの二人はある出来事をきっかけに「友」となり、この十蔵も回想シーンに度々登場します。

実質的には源五と将監、十蔵の三人が主人公の物語と言っていいでしょう。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
少年の日を共に同じ道場ですごした家老と郡方役。地方の小藩の政争を背景に、老境をむかえた二人の武士の運命がふたたび絡みはじめた―。第14回松本清張賞受賞作。

源五は普請組から鉄砲衆となり、新田開発にのめり込む生活を送り、工事が終わった後、何の恩賞も与えられないまま・・・郡方として今に至っています。

小弥太(後の将監)の父は藩内の政争により江戸で暗殺され、母・千鶴も数年後に政争の道具となることを拒んで、自害。小弥太は松浦家の婿養子となり、それ以後数々の功績を挙げ、江戸にまで「名家老」として知られる人物になります。

十蔵は将監の父の仇を討つ手助けをし、その後、一揆の首謀者として処刑されます。このことをきっかけに20年前、源五は将監に絶縁状を送ったのです。

この三人の生き方は全く別の道。しかし、潔く生きるという点では共通しており、物語を読み進めていくとどの人物にも共感を覚えさせられ、三人それぞれが胸に抱く「友情」、そして「葛藤」が読む者の心を打つのです。

詳しくは書きませんが、50歳を過ぎた源五と将監が再び心を通わせて藩の政争(騒動)に立ち向かう過程を描いた物語です。時代は行きつ戻りつしますが、無駄な描写は一切無く、テンポよくラストへと・・・。

さまざまな人間ドラマがぎゅっとつまった、人生の応援歌とも言える時代小説「蜩ノ記」に次ぐオススメの作品です。

以前にも書きましたが、「武家もの」を読むのなら・・・やっぱり、葉室麟。「市井もの」が好みの私ですが、葉室麟は例外。作家デビューが遅く60作ほどの作品しか残さなかったことが悔やまれます。
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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「短夜の髪 京都市井図絵」

澤田ふじ子の「短夜(みじかよ)の髪 京都市井図絵」(光文社)を読みました。
短夜の髪
今までにこの作家の作品を10作ほど読みましたが、どれも京都を舞台とした時代小説で、(いつかのブログに書きましたが)耳に馴染んだ関西訛り(京都言葉です)で会話が進むのでとても読みやすく、スッと入ってくるのです。

本作も同様で、江戸末期の京都を舞台とする時代小説です。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
「ええ骨董品は心を慰め、裏切らへん」。地道に真っ当な商いをする茶道具屋「柊屋」を舞台に、京の町に健気に生きる男女と、骨董に魅せられた人々の喜怒哀楽を描く。

上記のように「柊屋」が全ての短編に絡んできますが、主人公は短編毎に異なった人物となる少し変則的な連作短編集です。

「野楽の茶碗」「危ない橋」「短夜の髪」「暗がりの音」「世間の篝火」「誰の徳利」という6編から成っています。

柊屋の主は、善左衛門。妻のお絹を娘のお稀世が14歳だった5年前に亡くし、異母兄の28歳になる竹次郎が番頭として働いている茶道具屋(書画や骨董品も扱う、いわば古道具屋)を営んでいます。

それぞれの短編に私のよく知らない骨董品が登場します。

野楽の黒茶碗と巨勢金岡が描いた白衣観音図、白鳳時代の誕生仏、李朝時代の大井戸茶碗、巨勢金岡筆の聖徳太子孝養図、美濃焼の絵徳利・・・澤田ふじ子らしく、(懇切丁寧に)これらの骨董品の歴史や由来などが作中に詳しく描かれています。

骨董の蘊蓄については・・・もちろん、骨董品に興味が無い私ですから、文字を目で追うだけで頭には何も入ってきません。

各短編の主人公は何百両、何千両もする高価な骨董品だとは知らずに、例えば1両で売ろうとしたり・・・市井に生きる貧しい主人公がいかに救われていくかを描いたり、反対に悪辣に金儲けを企む商売人が登場したり・・・まさに市井図絵でアリマス。

その鍵となるのが柊屋。

骨董品に興味が無い方でも十分に楽しめる短編集です。温かく「人情」を浮かびあがらせた読みやすい時代小説でした。ややこしい「歴史や骨董」の解説部分はすっ飛ばしてもOK?だと思います。
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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「フォークロアの鍵」

川瀬七緒の「フォークロアの鍵」(講談社)を読みました。
フォークロアの鍵
この作家と初めて出会ったのは「よろずのことに気をつけよ」でした。その後、法医昆虫学者、赤堀涼子を主人公とするシリーズがお気に入りとなり、シリーズ最新作(6作目)で、今年発売されたばかりの「紅のアンデッド」を読み・・・7作目が出版される日を待つ(1年後か2年後?)つもりでした。

図書館でシリーズ作ではない、昨年発売された本作を偶然見つけて・・・手に取ってざっと目を通すと、認知症のことを扱った小説らしいと分かり・・・すぐにカゴの中へ。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
千夏は民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生。老人の“消えない記憶”に興味を持ち、認知症グループホーム「風の里」を訪れた。入所者の一人・ルリ子は、夕方になるとホームからの脱走を図る老女。会話が成り立たない彼女の口から発せらせた「おろんくち」という言葉に千夏は引っ掛かりを覚え…。乱歩賞作家の傑作長編・深層心理ミステリー。

主人公の千夏は、大学から民俗博物館へ出向し、フィールドワークとして都内にあるグループホームに通うことになります。

この「風の里」というグループホームは11ヶ所の施設を経営している民間会社「風紋」グループが経営する施設で、同じ系列のホームから「厄介払い先」(方々の施設から退去させられた老人の「吹き溜まり」)となっているホーム。

要介護2から要介護4までの老人が入居。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などさまざまな種類の認知症患者が混在し、進行度合いもさまざまな6人の老人が共同生活を送っているホームです。

物語は、この「風紋」グループ系列や在宅介護先をまわってさまざまな指導を行っている松山というカウンセラー(さまざまな肩書きを持つ介護の「プロ」)の画一的指導や認知症についての誤った認識についても読者に投げかけ、認知症の老人への接し方に警鐘を鳴らす内容も含まれています。

また、不登校となり、母親を殺そうとナイフを持ち歩くようになった17歳の少年、大地の生育歴や家庭問題が描かれ、前半部分を読んでいるときには焦点をどこに当てているのかが分からず・・・しばらくの間は辛抱しながら読み進める必要があります。

この物語の肝は・・・なぜか夜になるとホームを抜け出そうとするルリ子が発する言葉を手がかりに、千夏が大地の力を借り、そして、それまでバラバラだった入所者たちの知恵と集団の力を借りて、ある事件を解決に導くというもの。

後半部分は、急展開・・・。

介護、家庭教育などの記述で一部不必要なものがありますが・・・読後感がよく、オススメに値する良作でした。
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

キク

Author:キク
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旧「アコーディオン好きの徒然日記」ともどもよろしくお願いします。

◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

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