ひょうたん
宇江佐真理の「ひょうたん」(光文社)を読みました。 「織部の茶碗」「ひょうたん」「そぼろ助広」「びいどろ玉簪」「招き猫」「貧乏徳利」という6編からなる連作短編集です。
いつかのブログに、宇江佐真理は「江戸市井の人々の思いや出来事を、季節の移ろいに織り込んで温かく描く」作家だ、というようなことを書いたことがありますが、この「ひょうたん」も宇江佐節が遺憾なく発揮された良質の作品でした。
「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集。
主人公は「鳳来堂」という中古の鍋釜、鉄瓶、漆器、たんす、ふとんなどを扱う古道具屋の主、音松。かつては博打などの道楽で何度も痛い目に遭うほど太平楽な暮らしをしてきた男。
音松の妻、お鈴はしっかりもので、このお鈴の力もあって一度は潰れかけた「鳳来堂」を日々の暮らしに困らないほどの古道具屋に…。
二人の間には10歳になる息子がおり、音松の兄が営む質屋に小僧として住み込んでいます。
お鈴は店番の合間に外に七輪を出し、魚を焼いたり煮物の鍋を掛け、季節に応じた旨そうな料理をこしらえることで近所中に知られる料理好き。晩飯時には音松の子どもの頃からの友人(酒屋の房吉、駕篭かきの徳次、料理茶屋を営む勘助)が集い、酒を酌み交わしながら泣いたり笑ったり…。
私のお気に入りは表題作の「ひょうたん」ではなく、「そぼろ助広」と「びいどろ玉簪」。「そぼろ助広」は、ある浪人が鳳来堂に持ち込んだ刀をめぐる話で、音松が質屋を営む兄に「鑑定」を頼むと…百両はくだらない名刀だと分かります。
音松は浪人のことを親身になって考え、刀を買い取らずに当座をしのげる1両を貸すことにし…浪人は国元での仕官が叶い刀を手放させずにいたことが「救い」となった、というお話。
「びいどろ玉簪」は、音松が留守のときに子どもが持ち込んだ簪(かんざし)をお鈴が買い取り、目を離した隙にお金と簪を子どもに持ち逃げされるというお話。騙(かた)りの裏にはその子らの義父の酷い虐待が…。
心が洗われる良質の短編集でした。
いつかのブログに、宇江佐真理は「江戸市井の人々の思いや出来事を、季節の移ろいに織り込んで温かく描く」作家だ、というようなことを書いたことがありますが、この「ひょうたん」も宇江佐節が遺憾なく発揮された良質の作品でした。
「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集。
主人公は「鳳来堂」という中古の鍋釜、鉄瓶、漆器、たんす、ふとんなどを扱う古道具屋の主、音松。かつては博打などの道楽で何度も痛い目に遭うほど太平楽な暮らしをしてきた男。
音松の妻、お鈴はしっかりもので、このお鈴の力もあって一度は潰れかけた「鳳来堂」を日々の暮らしに困らないほどの古道具屋に…。
二人の間には10歳になる息子がおり、音松の兄が営む質屋に小僧として住み込んでいます。
お鈴は店番の合間に外に七輪を出し、魚を焼いたり煮物の鍋を掛け、季節に応じた旨そうな料理をこしらえることで近所中に知られる料理好き。晩飯時には音松の子どもの頃からの友人(酒屋の房吉、駕篭かきの徳次、料理茶屋を営む勘助)が集い、酒を酌み交わしながら泣いたり笑ったり…。
私のお気に入りは表題作の「ひょうたん」ではなく、「そぼろ助広」と「びいどろ玉簪」。「そぼろ助広」は、ある浪人が鳳来堂に持ち込んだ刀をめぐる話で、音松が質屋を営む兄に「鑑定」を頼むと…百両はくだらない名刀だと分かります。
音松は浪人のことを親身になって考え、刀を買い取らずに当座をしのげる1両を貸すことにし…浪人は国元での仕官が叶い刀を手放させずにいたことが「救い」となった、というお話。
「びいどろ玉簪」は、音松が留守のときに子どもが持ち込んだ簪(かんざし)をお鈴が買い取り、目を離した隙にお金と簪を子どもに持ち逃げされるというお話。騙(かた)りの裏にはその子らの義父の酷い虐待が…。
心が洗われる良質の短編集でした。
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