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快挙

白石一文の「快挙」(新潮社)を読みました。
快挙
昨年、この作家の「翼」という作品を読み、「死」について語る登場人物の言葉遊びのような台詞に辟易したというようなことをこのブログで書いたことがあります。私の好みではない作品を読んでしまい…「駄作とまでは言い切れませんが、お勧めには値しないもの」と酷評しました。

山本周五郎賞や直木賞を受賞したような作家の作品でも万人に好かれるということはあり得ません。私にとっては「駄作」でも違う人が読めば絶賛するようなこと…これはごく当たり前のこと。

図書館で本を選んでいると、白黒写真の中にシーソーだけが赤と青で強調されている表紙に興味を惹かれ、この「快挙」を借りて読むことにしました。もちろん、あまり「期待」はしていませんでしたが…。

読んでみて、この作家への評価が少し変わりました。もちろん、いい方向へ。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
あの日、月島の路地裏であなたを見つけた。これこそが私の人生の快挙。しかし、それほどの相手と結婚したのに五年が過ぎると、夫婦関係はすっかり変質してしまった。共に生きるためには、不実さえも許す。それこそが夫婦。そう思っていたが、すべては私の驕りにすぎなかった…。結婚に愛は存在するのか。結婚における愛の在処を探る傑作夫婦小説。

主人公は、大学生のときに名の通った写真の新人賞を受賞し、写真家となることを目指していた(今は小説家)山裏俊彦。浅草にある外国人専用のホテルで夜間だけフロント係としてバイトしながら写真のプロとしての道を歩んでいた私(主人公の一人称語り)が偶然通りかかった居酒屋の物干し場にいたみすみという女性の写真を撮ったことから彼女と親密になり、その日から同棲を始め、4ヶ月後に25歳(みすみは27歳)で結婚した1992年から物語が始まります。

二人とも家庭環境に恵まれず、飛び出すように家を出て生活を始めたという共通点があります。そんな二人の20年あまりの生活を日記風に綴った物語です。

結婚後、写真家になる道をあきらめて小説家としての道を歩み始める「私」。そんな「私」を仕事をすることによって金銭面で支え続けるみすみ。

みすみが流産したり、「私」が結核を患い長い療養生活を送ったり、みすみに乳癌が見つかり…次々に二人を襲う災難。最たるものは、みすみの浮気。そして、「私」を応援してくれていた雑誌編集長の事故死。

ベストセラー作家となるまでの苦難の道を描いた物語です。「快挙」とは「私」が書いた2つの小説の名でもあるのですが、この物語に書かれている本当の「快挙」とは…ぜひ読んで見つけて下さい。「翼」を書いたのと同じ作者の小説とは思えないほど良質な作品でした。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:4 

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◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
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