「太陽は気を失う」

乙川優三郎の「太陽は気を失う」(文藝春秋)を読みました。
太陽は気を失う
この作家のことを時代小説作家だと思い込んでいたので・・・図書館で表紙を見てビックリさせられました。パラパラめくってみると、現代小説でした。14編からなる短編集なので読み応えがないだろうと思い、迷ったのですが・・・ダメモトと割り切って借りました。

描かれている内容は私にはあまり縁がない世界の話が多いのですが、全ての短編が人生の再出発を描いていますので考えさせられることが多い短編集でした。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
生死を分けたあの時間、男女が終わった瞬間、人生で最も大きな後悔と向き合う最後の時…。人生の分岐点を端正な文章で切り取った、十四の芳醇な現代短編。

「太陽は気を失う」「海にたどりつけない川」「がらくたを整理して」「坂道はおしまい」「考えるのもつらいことだけど」「日曜に戻るから」「悲しみがたくさん」「髪の中の宝石」「誰にも分らない理由で」「まだ夜は長い」「ろくに味わいもしないで」「さいげつ」「単なる人生の素人」「夕暮れから」という14編から成っています。

主人公は中高年の男性や女性。家族を喪ったり、仕事を失ったり、大病を患ったり、定年退職後の第2の人生の出発で苦しんだり、離婚後にしたたかに生きる女性のあくまでも前向きな姿を描いたり、年老いてから妻に去られていく男の寂しさを描いたり・・・共通するのは女性の強さ。

特に印象に残ったのは表題作の「太陽は気を失う」。

40代のときにそれまでうまくいっていた会社を博奕で潰した夫は、畑違いの職を転々として今は引退。貯金は底をつき普通に生活することすら難しくなっているにもかかわらず裕福なご主人を気取り、毎日何もせず、することといえば海岸への散歩だけ。

そんな夫が「私」に言った言葉が「田舎へ行ってこい、母親なら家を売ってでも俺たちを助けるべきだろう」。

帰郷した「私」は老母にお金の話を切り出すことができず、母に頼まれて買い物に出かけようとしたときに地震が・・・そして津波警報が・・・津波から逃れ、かろうじて通じた公衆電話で夫に東京の姉に連絡して車で助けに来てほしい旨を言うと、「あの人は苦手だ、話したくない」「金は借りたのか」・・・。

福島第1原発が水素爆発を起こし、余震に放射性物質の脅威が加わり呆然としている「私」を救ってくれたのは従姉夫婦。車で東京まで連れて行ってくれたのです。

あれからおよそ30ヶ月。「私」は離婚して、母の介護をしながら近所のスーパーでパートの仕事。

震災で奇跡的に生き延びたことや生死不明の人々の描写などを省くと、こんな内容の小説です。

・・・表紙の意味が??読み終えても何故こんな表紙にしたのかまったく理解できません・・・

味わい深い短編もあるのですが、ストーリーの粗い短編が多く、あまりオススメできません。
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ジャンル : 小説・文学

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