「私の宝石」

朱川湊人の「私の宝石」(文藝春秋)を読みました。
私の宝石
今までに読んだ作品は、いわゆる「ノスタルジックホラー」的なものが多く、昭和40年代を舞台にした「かたみ歌」では全ての短編に幽霊が登場。昭和30年代を舞台にした「「わくらば日記」。「銀河に口笛」は幽霊は登場しませんが、昭和40年代を舞台にして不思議な現象が起きる物語。アンソロジーに収録された短編2作も郷愁を誘うホラーがかった短編。例外?は若い方が読んでもOKな「本日、サービスデー」。

昭和という時代を懐かしく感じることができる世代以外にはホントのよさが分かってもらえない作品ばかりでした。

今回の「私の宝石」は・・・「さみしいマフラー」「ポコタン・ザ・グレート」「マンマル荘の思い出」「ポジョン、愛してる」「想い出のセレナーデ」「彼女の宝石」という6本の短編が収められていて、ホラー的な作品は「さみしいマフラー」だけ。

昭和30年代から40年代のことが多く登場します。私と同世代の方が読めば郷愁を感じる話が多いのですが「さみしいマフラー」以外はホラー色が全くなく、ホラーがかった作品が苦手な方にもオススメできる逸品ぞろい。「昭和」を知らない世代にもオススメできる短編も収録されています。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
女性の前で男性が「さみしい」と口にする時、きっとさみしさは、その瞬間に消えているのです。じんわりと心をえぐる、特別な愛のストーリー6編。

最も印象に残ったのは「ポコタン・ザ・グレート」。

ポコタンは柔道家だった父の初めての子どもで4600gという大型サイズで生まれ、楽天家の母の影響なのかおおらかでよく笑う子に成長。

ポコタンの古い記憶の中に父親から土下座されている光景があります。何を謝っていたかというと、愛娘の顔や体格があまりに自分に似てしまったということ。格闘技をするために生を受けたようながっしり骨太の大男。顔もいかつく、細い眼にあぐらをかいたような鼻、への字を描く口。若き日のあだ名は「広目天」や「平家蟹」、高校教師になってからは「南洋の呪い面」。

否定的なことは何一つ言わず、美点を見つけ出して子育てした母の影響で、ポコタンは自分が可愛くないなどとは夢にも思わず、楽しい幼少時代を過ごします。

そんなポコタンでしたが、自我が芽生えるにつれて生きづらくなっていきます。小学校高学年になると父の遺伝子が色濃く表れ、「大魔神」「ジャガイモ」「岩石」「ゴーロン星人」などなど、男子からつけられたあだ名は数知れず・・・。

そんなポコタンが中高生から短大生、社会人、母親となるまでを描いた小説です。

ある人物がポコタンの歩みを語る形式をとっています。その語り手とは・・・(ネタバレになりますが)ポコタンの息子。

父は・・・ポコタンの中学生時代の一年先輩で、百m走では区の最高記録保持者、勉強は常に学年で5番以内、男が見ても惚れ惚れするするくらいにハンサムでずっともてもて状態が続いていた男。

美醜が人生をいかに左右するか・・・ポコタンの歩んだ道を朱川湊人らしさあふれる優しい視点で描いたオススメの短編です。

読みやすい文章で書かれ、短編によって味は異なりますが、じわっと旨さが口の中に広がるような・・・強烈な物語性はありませんが・・・読んで心が洗われるような作品が揃っています。ご一読あれ・・・。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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キク

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◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

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