「眩(くらら)」

朝井まかての「眩(くらら)」(新潮社)を読みました。
眩(くらら)
ハズレがない作家だと、いつかのブログに書いたことがありますが・・・本作も例外ではありませんでした。

「阿蘭陀西鶴」という時代小説をご紹介したことがあります。浮世草子で知られ、元禄期に活躍した井原西鶴の娘のおあいを主人公に据え、西鶴の人間像を描くとともに父と娘の情を巧みに描いた素晴らしい作品でした。この手法とよく似た小説ですが、読み応え感は比べものにならないほど本作の方がまさっていました。

今回の「眩」は葛飾北斎の娘、お栄(葛飾応為)を主人公とし、偉大な父が90歳で没するまでの父と娘の情を描き、父が没した後「吉原格子先之図」を完成させるまでを描いて物語は終わります。

北斎の「冨嶽三十六景」や「富士越龍図」などは知っていましたが、応為の「夜桜美人図」や「三曲合奏図」は見た記憶がなくてネットでその絵を見ながら小説を読み進めることとなってしまいました。こんな読み方をするのは滅多にありません。

ネットで見たのはhttp://japan.digitaldj-network.com/articles/26513.htmlhttp://www.memcode.jp/6406等々。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
偉大すぎる父・北斎、兄弟子・渓斎英泉への叶わぬ恋、北斎の名を利用し悪事を重ねる甥―人生にまつわる面倒ごとも、ひとたび筆を握れば全て消え去る。北斎の右腕として風景画から春画までをこなす一方、自分だけの光と色を終生追い続けた女絵師・応為。自問自答する二十代から、傑作「吉原格子先之図」に到る六十代までを、圧倒的リアリティで描き出す。

お栄は物心がついた頃から親父どの(北斎のこと)の絵に埋もれ、気がつけば他の弟子と肩を並べて修行をしていました。ずっと絵だけを描いていたかったお栄は「お針や煮炊き」などする気はなく、絵筆しか持たない「変わり者」で、数々の縁談は相手の方から断られ続けてきました。

ただ一人、絵師の吉之助だけは驚くほどの早さで祝言の日取りを決め、22歳のときに夫婦となります。が、3年待たずに離縁。お栄は着物に頓着したことがなく、何日も着通して垢じみてくれば手近なものに着替え、寒ければ亭主の股引をはき、髪を結うのも面倒で洗い髪を一つにくくったまま。料理は煮売り家で適当に見繕ってきたものを出すことが多いお栄。吉之助の「真昼間から茶碗酒を喰らうくせに、亭主のために茶の一杯も淹れられないのか。お前なんぞ、女の屑だ」という言葉をきっかけに家を出てしまったのです。

このことが書かれているのが第一章「悪玉踊り」。その後は甥の時太郎の悪事の尻ぬぐいなどの話が続き、前半部はぐっと我慢の読書でした(第二章「カナアリア」、第三章「揚羽」、第四章「花魁と禿図」、第五章「手踊図」、第六章「柚子」、第七章「鷽」)。

ところが第八章「冨嶽三十六景」から俄然面白くなり、第九章「夜桜美人図」、第十章「三曲合奏図」、第十一章「富士越龍図」、第十二章「吉原格子先之図」は北斎とともに仕事をしたり・・・北斎が中気(脳卒中)で倒れて再起するさまを見事に描いていたり・・・北斎が90歳でなくなって以降の葛飾応為として名を成していく物語等々・・・後半部はずっと引きこまれっぱなし・・・。

読みどころは後半部なのですが、イライラさせられる前半部があってこそのクライマックス。さすが、朝井まかて!!

天才女絵師の奔放な生涯を描いた傑作でアリマス。ご一読あれ。
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◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
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