「ゆらやみ」

あさのあつこの「ゆらやみ」(新潮社)を読みました。
ゆらやみ
この作家の時代小説を何冊か読みましたが、これほど暗い色彩を帯びた作品は初めてです。

あさのあつこが書く時代小説は葛藤する内面の描写が素晴らしいのですが、「描きすぎ」、「くどい」と感じるようになって・・・しばらく遠ざかっていました。

物語の舞台となるのは、石見銀山。今から10年ほど前に石見銀山遺跡が世界遺産に登録されましたが、私はまだ訪れたことがありません。銀を採掘した坑道(「間歩」まぶ)で働くことの過酷さや羅漢寺のこと、幕末の世の動き、鉱山に隣接して発展した大森の町・・・描かれていることは多岐にわたります。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
石見銀山で育ったお登枝は身寄りもなくまもなく女郎になる。客をとる前夜、お登枝は堪えきれず密かに想いを寄せていた銀掘の伊夫の許へと逃げるが男に後をつけられて―。幕末の石見銀山で出逢った山の神に愛された若き女郎と銀を掘る少年。罪に手を染めても、愛し抜こうとした二人の灼熱恋愛長編。

物語は明治から大正時代までを備前の商人の妻として生き抜いたお登枝が、幕末期に女郎宿「かぐら」で「かぐらのお登枝」として遊女の頂点に立った時代を回想するという形式をとっています。

石見銀山の最盛期は江戸時代初期。幕末期には終焉に向かっており、ただ一軒だけ残った女郎宿「かぐら」は10人前後の「女」を抱え、旅籠商いもしている宿。

銀掘(かなほり)だった六蔵爺はお登枝の母の兄。間歩でお登枝を産み落としてすぐに死んでしまった妹に代わって育ててくれた六蔵爺は、銀掘としては驚くほど長生きでしたが、51歳になった正月明けに世話になっていた「かぐら」の離れで亡くなります。お登枝が10歳のときでした。

「かぐら」の女将、おそのはお登枝が一番高く売れる時期を慎重に計り、一番高く売れる男を物色していました。

「かぐら」で下働きをしていたお登枝が12歳のとき、岩見に住む山主の長男に嫁ぐ「花嫁御寮」を見に行かせてもらったときに撒かれた餅を拾うことができ、大切に持ち帰ろうとしていました。帰り道に少年たちに大事な祝い餅を奪われそうになったところを助けてくれたのが、流れ者で切支丹だった伊夫という少年。

伊夫の父は流れ着いた岩見で銀堀として働き、まだ少年だった伊夫は堀子の使い走りである手子を経て鉱石を運ぶ「柄山負(がらやまおい)」となっていました。その父は六蔵爺が亡くなった後に死んでしまい、伊夫が独りで住む小屋にお登枝は何度か食べ物を届けに行くうちに「恋心」が芽ばえていきます。

一年後、そんなお登枝の初めての客が決まり、おそのに覚悟をさせられるお登枝。相手は大森の豪商で62歳になる大旦那。

お登枝は客をとる前の日に「かぐら」を抜けだし、伊夫を訪ねるのですが・・・前夜、お登枝を買いたいと談判して断られていた与治という男に襲われ、間一髪というときに伊夫が阿修羅の如き形相で・・・与治を殺してしまいます。そして・・・お登枝と伊夫は結ばれます。

この一度きりの夜を支えに、お登枝は辛い「かぐら」での生活に耐えていくのです・・・。

物語はこうして始まるのですが、まだほんの序章に過ぎません。続きを知りたい方はぜひお読み下さい。あさのあつこにしては珍しい性描写がそこここにされている時代小説です。
スポンサーサイト
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:2 

Comment

くま女房 URL|
#- 2017.09.27 Wed06:59
銀山が舞台の小説に、玉岡かおるの「銀のみち 一条」というものがあります。毎年、一人の作家を集中して読む傾向があります。昨年は有川浩、その前が玉岡かおるでした。今年は、宇江佐真理をよく読んでいます。
キク URL|くま女房さんへ
#- 2017.09.27 Wed17:24
玉岡かおるの作品をまだ読んだことがありません。
図書館でパラパラ読みしたことはありますが・・・女性向けの小説を書く作家、というイメージです。
でも、一度は読んでみようと思っています。
comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

キク

Author:キク
FC2ブログへようこそ!
旧「アコーディオン好きの徒然日記」ともどもよろしくお願いします。

◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
検索フォーム
QRコード
QR