「オランダ宿の娘」

葉室麟の「オランダ宿の娘」(早川書房)を読みました。
オランダ娘の宿
時代小説という側面よりも歴史小説としての側面が強い物語でした。

幕末期に起こった「シーボルト事件」を縦軸に、阿蘭陀(オランダ)宿・長崎屋姉妹の成長記を横軸とした斬新な歴史小説と言っていいでしょう。

ずいぶん前に読んだ朝井まかての「先生のお庭番」でもシーボルト事件が扱われていましたが、ドイツ人(オランダから派遣)医師シーボルトの薬草園づくりをしていた男を主人公とした物語で、シーボルトのためにガクアジサイやヤブツバキ、鹿の子百合、鉄砲百合、春蘭などをオランダに運ぶ奮戦記といったものでした。

本作は、シーボルトが日本地図などを持ち出そうとして、それに関わったとされる多くの幕吏や鳴滝塾門下生、通詞、医師などが処分を受けた事件に焦点を当てています。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
江戸参府のオランダ使節団が、自分たちの宿「長崎屋」に泊まるのを、るんと美鶴は誇りにしていた。文政五年、二人は碧眼の若者、丈吉と出逢い、両国の血をひく彼と交流を深めてゆく。まもなく、病人のために秘薬を探していたるんは、薬の納入先を聞きつけた丈吉と回船問屋を訪れる。が、店に赴いた彼らが発見したのは男の死体だった。さらに数年後シーボルトをめぐる大事件が起こり、姉妹はその渦中に。

東インド会社の代表として来日したオランダ商館長(カピタン)が多くの供を連れて江戸参府を行う際に特別に数日間滞在する宿を阿蘭陀宿と呼び、小倉と下関、大阪、京都、江戸にその宿がありました。

最も長く滞在し、訪れる人物が多かったのが江戸の長崎屋。主である源右衛門にはるい美鶴という娘がおり、この二人の姉妹が関わった人物たちのことから物語が始まります。

長崎屋が懇意にしている人物が病弱なため、二人が南蛮渡来の薬(テリアカ)を手に入れるために訪れた会津屋は唐人の抜け荷組織と深い関わりを持っており、闇の組織から命を狙われることとなります。

伊能忠敬から測量術を学び、樺太が島であることを発見した間宮林蔵(シーボルト事件の密告者)が幕府の隠密として重要な役割を担って登場したり、後に「遠山の金さん」として名を馳せる遠山金四郎景元や高野長英がチョイ役として登場したり、遊女・其扇(お滝)とシーボルトとの間にできた娘・イネが登場したり・・・飽きることなく一気に読ませる面白さを持った小説です。

美鶴が持つ予知能力や占いを行う妙心尼という尼僧の霊力を描いていることを除けば、歴史小説として良作の部類に入るのですが・・・このフィクションが余計なモノ?
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ジャンル : 小説・文学

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