「土蛍 猿若町捕物帳」

近藤史恵の「土蛍 猿若町捕物帳」(光文社)を読みました。
土蛍
この作家の現代小説(ミステリに属する作品)を読んだことがあります。3冊とも内容自体は悪くなかったのですが、お若い女性向けと思われる内容だったこともあり、もう読まないでおこうと思っていました。

たまたま図書館でこの作家の時代小説を見つけ、もしかするとメッケモンになるかもと思って借りたのですが・・・。

平易な文章で読みやすく、時代小説が苦手だという方にはオススメできますが、「時代推理小説」としては奥行きがなく、推理小説としての面白みに欠け、及第点がつけられない短編集でした。シリーズ5作目で、この作品しか読んでいないことがそう感じさせるのかもしれませんが・・・。

宇江佐真理の「なでしこ御用帖」や「斬られ権佐」、宮部みゆきの「ぼんくら」などとは大違い。筆力の差があまりにも開きすぎています。こうした力作を読み慣れている方にはオススメできません(近藤史恵ファンの方、ゴメンナサイ。他意はゴザイマセン)。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
吉原で火事があった。青柳屋の遊女・梅が枝は逃げ遅れて火傷を負ったという。同心・玉島千蔭は梅が枝を気遣うが、すぐに見舞いに行こうとはしない。千蔭は梅が枝の客ではないし、深い仲でもないから。行ってどうこうできるわけでもないから。やがて、梅が枝の身請けの話が進んでいるという噂が、千蔭の耳に入る―。

「むじな菊」「だんまり」「土蛍」「はずれくじ」という4編からなる連作短編集です。

主人公は、南町奉行同心である玉島千蔭。物語は、千蔭に従って歩く小者である八十吉の目線で語られることが多いのですが、例外もあります。

4編の中から2編だけをネタバレにならない程度に紹介しますと・・・

表題作の「土蛍」=千蔭が親しくしている女形、水木巴之丞が舞台に立つ中村座へ同心の役目(演目が「お上」にたてつく内容でないか、奢侈に流れていないか等々を確かめる仕事)として見にいく千蔭と八十吉。

幕間に巴之丞から、千蔭が親しくしている吉原の遊女、梅が枝の身請け話が進んでいることを聞かされます。この身請け話にはある事情が絡んでおり、この物語の柱となるほど重要な話。

どう展開するのかと思えば、中村座の新八という役者が自ら首をくくって死んだように見せかけた事件が起こり、新八を殺めた男の動機と絡めて、身請け話の裏に潜むある人物とその妻の複雑な心の内を解き明かしていくという趣向を凝らしたもので、この短編集の中では最も出来のよい物語。

最も出来がよくなかったのが、書き下ろし作の「はずれくじ」。

不運が重なって(それだけではありませんが)、決まった仕事をせず借金だらけの直吉。同じ長屋に住むお米に富くじを買ってくるように頼まれます。お米は占いで「身近にいる運の悪い男に買わせると当たる」と言われたことから直吉に頼んだのでした。一等が百両で、もし当たれば二人で折半するという約束で。

その直吉が川で溺死。千蔭たちが調べると二等の五十両の当たりくじがまだ引き替えられていないことが分かり、川ざらえを行います。見つかったのは直吉がお米から預かった金で買った小さな翡翠の猫の根付け。

探索はここまでで、どういう経過なのかは明らかにされず、隣に住む少年が直吉を土左衛門にしたことが示されるだけ。

単行本化するにあたって書き下ろした作品が最もツマラナイ内容で、ページ数を増やすために書いただけ?のような駄作。この作品が全体の印象をよくないものにしてしまっています。

貫井徳郎の「壁の男」という素晴らしい作品を読んでから、4作続けてハズレ・・・次の作品が好みの作品でありますように・・・。
スポンサーサイト
テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

Tag:読書  Trackback:0 comment:2 

Comment

MR.BON URL|
#- 2017.10.31 Tue09:39
期待して読んだ本が4作続けてハズレだった由。
「キク氏のお眼鏡にかなうような作品は、そう易々と書けるわけには行きまヘンデェ、世の作家たちよ!! 心しなはれやァ」ってなこってすナ。

 さて次にワタイが書くことは、この日のことやのぅて、前の日に松原アコさんが新しい施設「輝(テラス)」で初練習した際の、「調律されていないひどいピアノの音色に驚いた」の記事を読んで思い出したこと次の映画のことです。

 「愛情物語」(原題 The Eddy Duchin Story)は、実在した名ピアニスト、エディ・デューチンの生涯を描いた1956年の米映画で、主役のデューチンを演じたのは超二枚目俳優タイロン・パワー(二枚目と言えばキクさんとエエ勝負でんな)、共演の妻役は映画「ピクニック」のキム・ノヴァクで、一粒種の少年を残して妻は若くして亡くなるのですが、夫デューチンが演奏旅行に出かけている間に第2次世界大戦が勃発し、終戦となってやっと家に戻った時、10歳になっていた息子は彼に懐きません。
 そんな時場末ののサロンでおんぼろピアノを見つけたデューチンはそばにいた息子に、低い方のドとソの2音をド・ソ・ド・ソのように両手の指1本ずつで続けて弾くよう、少年の背中側にまわって教えます。少年の右側に移った彼は即興で、その音に合うよう素晴らしい音楽を奏でます。少年は夢中になり、どんどん楽しくなってきます。二人のやりとりに場内にいた大人どもは大喝采。それを機に父と子は愛情を取り戻すのですが、二人が調律の効いていないピアノを弾く即興演奏の見事さが、ワタイには強烈な印象として心に残っています。
(松原輝:テラス:のピアノの音色の悪さは、どうやらその比ではなかったのでしょうナ。オオ コワッ!!)

 別の曲ですがスコット・ジョプリン作曲の The Entertainer(映画 Sting の主題曲)に代表されるラグタイムという形式の音楽も、こんなピアノがよく似合います。(試しにどなたかテラスのピアノで、その曲を弾いてみよう、という勇気のある方はイテハリまへんか!!???)
 
キク URL|MR.BONさんへ
#- 2017.10.31 Tue17:15
昔、愛情物語のTo Love Againを弾いたことがあります。
ショパンのノクターンをアレンジした曲です。

まつばらテラスのピアノは「演奏」に耐えられないほど酷い調律でした。
(違う場面だと思いますが、ピアノを弾く場面がYouTubeにありました。https://youtu.be/61Se7MrKrpY
comment form
(編集・削除用):
管理者にだけ表示を許可
プロフィール

キク

Author:キク
FC2ブログへようこそ!
旧「アコーディオン好きの徒然日記」ともどもよろしくお願いします。

◆松原アコーディオンクラブ・奈良アコーディオン愛好会・ぱすとらあるアコ所属。
◆日本アコーディオン協会評議員

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
検索フォーム
QRコード
QR