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「結び屋おえん 糸を手繰れば」

志川節子の「結び屋おえん 糸を手繰れば」(新潮社)を読みました。
結び屋おえん 糸を手繰れば
この小説を読むまで「志川節子」という作家の存在を知りませんでした。私から見れば、無名の作家。経歴を調べてみると、2003年に初めて雑誌に作品が掲載されてから14年も経つというのに、今年7月の時点でわずか5作しか出版物がない作家でした。

そんな作家の作品ですが、ワルくはありませんでした。どちらかというとオススメしてもいい作品でした。ただ、「結び屋おえん」として縁談など、人と人を結ぶ稼業を中心的に描いていると勘違いさせるタイトルだけはいただけません。

このことを除けば・・・ていねいな人物描写や人情の描き方に好感が持て、今後を期待していい作家だと感じました。

「BOOK」データベースには、次のように紹介されています。
結び屋、それは人のご縁を繋ぐ業。無実の罪を着せられ、大店の妻の座を追われたおえん。悲しみの中で過ごすうち、ひょんなことから魚河岸の女仲買いと商家の若旦那の縁談を取り持つことに。でも商家の奥には、手ごわい姑が構えていて…。悲しみと幸せが降り積もる連作時代小説。

主人公のおえんは小間物問屋「丸屋」の実家から味噌問屋「松井屋」に嫁ぎ二人の男子を設けましたが、9年前に花見に出たときに長男の友松が行方不明に。

月日が経ち、12歳となった次男の幸吉を残して松井屋から出て、芽吹長屋で暮らすようになってからの1年間を描いた物語です。

夫であった松井屋文治郎から役者と不義を働いたと事実に反する疑いを持たれて離縁され、初めて長屋暮らしをすることになります。世話を焼いてくれたのは、実家の「丸屋」でかつて番頭をしていた丈右衛門。

おえんは自分で生計を立てた経験がありませんでしたが、習い事で覚えた縫い物の腕を活かして仕立ての仕事で贅沢はできなくても生きていけるだけの収入を得て暮らす生活を始めました。

そんなおえんがある人物の縁を取り持ったことをきっかけに「結び屋」の看板を掲げ、仕立てと結び屋としての礼金で生きていく道を選びます。

ここまで読んで、「結び屋」として関わった人々のことを軸にした時代小説だと思ったのですが・・・読み進めていくと、行方不明となった長男に対する思いや次男の幸吉を案ずる、「母」としてのおえんを描くことが柱となった物語へと軸がぶれていくのです。

少しだけ縁を取り持つ「結び屋」としての仕事が描かれているだけで、自らは「縁」とは程遠い存在となったおえんの息子に対する愛情が描かれた物語だったのです。

長屋での人間関係や次男の幸吉の「成長」によって、おえんが「お嬢様」から脱皮して一人で生きていく女性へと成長していく過程を温かい視点で描いた良作。オススメには値しませんが、読んで損はありません・・・といったところでしょうか。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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